野菜のように

  • 2014.11.15 Saturday
  • 23:59
 8月、以前中学校で教師をしていた頃の教え子2人が、はるばる遊びに来てくれました。吹奏楽部でトランペットを吹いていた子たちなのですが、一人は愛知で大学院に通い、もう一人は京都でOL。OLの子なんて卒業以来会っていないので10年ぶりの再会ということになります。
 さて、今の時代、旅の情報誌もあふれているし、インターネットでの情報取得も容易なので、彼女たちもいろいろとリサーチしてきたようです。ところが、「どこに行きたい?」と訊くと……
「“旭川水族館”と“青い湖”に行きたいッ!」
 おいおい、なんて甘いリサーチなんだ。どうやら、ペンギンやホッキョクグマのイメージから水族館と勘違いしたようなのですが、名前まで違うし!
 彼女たちは我が家で2泊していったのですが、ちゃんと“旭山動物園”にも“青い池”にも連れて行きましたよ。
 初めて見る丘の景色や花畑にも感動していました。残念ながらすでにラヴェンダーのシーズンは終わっていましたが、色とりどりに咲く花や、文字通り小麦色に染まった畑や、濃緑色のビート、ちょっと黄色がかった豆畑……、あちらこちらでシャッターを切りまくっていました。

 我が家に着いた日の夜は庭でバーベキューをしました。お肉もたくさん食べて、ビールもたくさん飲んでご機嫌だったのですが、翌朝ダウン。お腹を抱えてう んうん唸っていました。前日、小樽や札幌でラーメンやお寿司やをたらふく食べて来たようでお腹は限界だったのでしょうね。おまけに熱まで出しちゃっ て……。
「せっかく北海道まで来たんだから、美味しいものたくさん食べなきゃ損じゃん。」
なんて言ってましたが、体調を崩しちゃ何にもなりませんよねぇ〜。
 それでも、ハウスの中ではミニトマトをほおばり、遅く生えて来たアスパラガスをポキッと折って食べてみたり、さらには穫れたてのトウキビを生で丸かじりしていました。細い身体してますが、胃袋は頑丈なようです。
 
「空気もキレイだし、食べ物は美味しいし、景色もいいし……。先生、本当にいい所に住んでるよね。」
 そう言い残して北海道を後にしていった2人……。

 そうだね。本当にいい所でのびのびと暮らしていると思うよ。
 おまけに、君たちのような素敵な教え子たちにも恵まれて、幸せな老後(ちょっと早いんだけど)を過ごさせてもらっているとつくづく思うよ。

 “私は庭の野菜のように太陽を浴びて成長し、食べて、飲み、眠りたいだけだ。”とは、往年の名指揮者カルロス・クライバーの言葉。
 残りの人生、ボクも、そんな風に生きていきたいものです。


トマトと丘巡り

  • 2014.06.28 Saturday
  • 23:59
 5月初め、例年よりも少し早めの桜が咲いたと思ったら、花見もしないうちに散ってしまい、なんと5 月16日には雪が積もりました。ハウスの中も10℃以上にならず、トマトたちも凍えていました。低温障害が出るのは避けられないようです。ご近所の80歳 を超えるおじいちゃんが、「こんな年は初めてだよ」なんて言ってました。
 ところが、6月に入ったとたん、いきなりの猛暑日。我が家の温度計は36.8℃を記録。外でその気温ですから、ハウスの中は40℃をかるぅ〜く超え、トマトたちもあまりの暑さにヘタヘタ。高温障害が出るのは避けられないでしょうね。
 ここでまたまたおじいちゃん登場。「こんな年は初めてだよ」って。そういえば、去年も同じセリフを聞いたような……。ま、いっか。

 こんな異常気象でも野菜たちは頑張って生きております。植物って本当に強いですね。人間なんかより、よっぽどタフに出来ています。
 我が家でも、5月初めからアスパラガスの収穫をしていますし、6月中旬からはトマトも穫れ始めました。まさに収穫ラッシュ!1年で一番忙しいシーズンが始まったわけです。

 さて、この時期のボクの楽しみの1つが、トマトの出荷なんです。
 何が楽しいのかと言いますと……

 我が家から選果場までは片道約10kmあるのですが、その間には、観光スポットになっている美しい風景が広がっています。
 行きはマイルドセブンの丘の下を横切って、帰りにはセブンスターの木の前を走りながらパッチワークの丘をながめたり、たまには親子の木に寄り道してみたり……。
 初夏の美瑛の丘は、小麦が色づき、ソバや馬鈴薯は白やピンクのかわいい花を咲かせていますし、ビートや豆は緑色で丘を彩っています。毎日見ても見飽きな い美しい風景は、日々その姿を変化させています。そんな景色をながめながらトラックを走らせていると、10年前、初めて訪れた美瑛のことを思い出したりし て、それだけでも心が癒される気がするんです。あの頃は、まさか自分がこの地で暮らすことになるなんて思いもしなかったなぁ〜、なんてね。

 ところが、そんなのんきにドライブを楽しんでばかりもいられないんです。
 道路脇に突然止まってドアが開くレンタカー、道路の真ん中で写真を撮るのに夢中の観光客、子どもの飛び出しもしょっちゅうです。とにかく、クラクション を鳴らさない日はありません。さすがに畑の中に入って行く人を見ることは稀になりましたが、どうか安全にも気を付けてほしいものです。

 とはいうものの、数年前まではボクらも観光客だったわけですから、そうした迷惑行為をしていたのかと思うと恥ずかしい思いでいっぱいなのですが……。
 さて、明日はどんな丘の風景を楽しませてもらえるのでしょうか。出荷のドライブが楽しみです。


ニャー vs.チュー

  • 2014.04.27 Sunday
  • 23:59
  はぁ〜るが来〜た〜、はぁ〜るが来〜た〜、ど〜こ〜に〜来たぁ〜♪
 まったく、どこに春が来たんだか。……ってくらい、美瑛の大地まだまだ雪に埋もれています。それでも、早くも農作業は始まっているんですよ。
 露地の畑での作業はさすがにまだ無理ですが、ビニールハウスの中では、ぼちぼちホウレンソウの収穫が始まっているし、我が家のハウスでは、5000ほどのトマトの苗たちがすくすくと育っています。

 さて、ある日、外で遊んでいた我が家の長男ニャンコの「チャイコ」君。何やら得意げな足取りでボクの所に寄って来ます。よく見ると口に何かをくわえてる。10cmくらいの茶色いそれは……。え?ネズミ??
 妻は思わず「ギャー」と叫んで逃げる。
「どこで捕まえたの?」とチャイコに聞くと、ニャーニャー言いながら案内してくれました。よほどネズミを捕まえたのが自慢だったのでしょうね。
 さて、その先で見たものは……!
 ハウスの地面一面に敷いたマルチが、2m以上も食い荒らされてる。しかも、定植したトマトのベッドには貫通するほど大きな横穴が!
 これはヒドイ。今まで、播種したカボチャやトウキビの種を食われたり、収穫後のカボチャをかじられたりしたことはあったけど、ここまで大胆に荒らされた のは初めてです。もぉ〜〜、ミッキーだか、ジェリーだか、ぐりとぐらだか、スチュアート・リトルだか知らないけど、勘弁して欲しいよ……。
 ともかく補修しなくちゃ、ということで穴を埋めて、マルチを敷き直したのですが、その最中もチューチュー鳴き声が聞こえる。声は聞こえど姿は見えず。いったいどこにいるんだろうと思っていたら、隣の育苗ハウスで子ネズミ発見。見付けたのはもちろんチャイコ君。
 育苗ハウスには、まだ発芽して数週間の小さなトマトの苗が、2000ほどポットに植わっているのですが、どうやらネズミはその苗を狙っているらしい。ネ コが現れてネズミは逃げる。チャイコはネコの意地にかけて(?)追いかけ回す。その間、チャイコはネズミを捕まえるのに必死でトマトの苗をいくつもひっく り返してくれました。もぉ〜〜〜、喧嘩ならよそでやってくれ!

さてさて、ハウスの中のそんな喧噪とは関係なく、雪解けは進み、陽当たりの良い所では、フキノトウやクロッカスが顔をのぞかせています。  
春の足音は、急ピッチで雪国にも聞こえて来ています。

冬眠なう。

  • 2014.01.11 Saturday
  • 23:59
 みなさん、明けましておめでとうございます。そして初めまして。

 突然ですが、ボクが北海道に移住したのはほんの思い付きからでした。  

忙しい毎日の中、「田舎でのんびり暮らしたいなぁ〜」となんとなく思ったのがきっかけで、「北海道で農業がしたい」なんていう明確な目標なんて全然なかったんですよ。それが、気が付けば農園を経営し始めて5年が過ぎ、田舎暮らしもすっかりイタについてしまいました。  

田舎と言っても、美瑛町の隣には旭川市という北海道第2の都市があるわけですから、それほどイナカイナカしているわけでもないんです。大きなスーパーまでも車を15分ほど走らせれば買い物に行けるし、大型ホームセンターも大手電化製品店も同じくらいの距離の所にあるし、美味しいラーメン屋も焼肉屋もファミレスも……。ね、なかなか快適でしょ。  

ただし、コンビニはですね……。家から10kmほどの所に2軒あるのですが、さすがに、夜中に「ちょっとお腹が空いたね」と言って出掛けられる距離ではないですね。  

でも、空気もうまいし景色もきれいですよ。夏の朝、トマトの出荷に行く時に通る道には、パッチワークの丘やマイルドセブンの丘、セブンスターの木などの景勝地が点在していて、それらの美しい景色を眺めながらトラックを走らせている時は、これが仕事だなんてことはすっかり忘れています。  

さて、ただいま美瑛の農家のほとんどは、長ぁ〜〜い冬休み真っただ中です。そりゃそうですよね。だって辺りは真っ白。1m近くも雪が積もっていては、農作業なんて出来やしません。いや、出来ないこともないんですけどね。最近は雪の下でキャベツやホウレンソウを育てている方もいますし、温室の中でがんがん暖房をたけば作物は出来るんだけど……。ボクはそんな根性も意欲も財力もないので、やっぱり冬は冬眠ナウなのです。まさに、晴耕雨読ならぬ「夏耕雪読」ですね。  

今年の年明けは、美瑛神社の境内で迎えました。毎年、ここで午前零時に打ち上げられる花火を見ながら新年を迎えるのが恒例になって来ました。近年、パワースポットとして有名になってしまった美瑛神社ですが、ボクも何かしらパワーがもらえたんだろうか?  

こんな風に話していると、うらやましいくらいスローライフを送っているように見えるでしょ。でも、こうしてボヤ〜ッとしていられるのもあと1ヶ月ほどなんですよ。3月からはトマトの育苗が始まるので、その1ヶ月前にはハウスにビニールを張らなくてはいけません。それには、まず積もった雪をどかさなくちゃならない。手作業じゃとても無理なので、大型の除雪機を使うのですが、氷点下の気温の中での作業はマジでシバレます。  

あぁ〜、考えるだけでも寒くなって来た。もうしばらく、冬眠生活を満喫させていただきます。

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